参加者の皆様からの感想メールを、斎藤が編集して掲載しています。不都合などある場合はご連絡ください。
酒井さん:当日の感想を、現地体験とリアリティの観点、またいま課題としている「音」についてのコメントです。斎藤・藤原も、先日「デジタル放送と音声ソフト制作 −マルチチャンネル音楽ソフトの最前線−」で日本や海外のミキサーの人たちが、論文とともに制作した作品をドルビーデジタルAC3で聞くチャンスがありました。なんか、森林の中で、従来のセンサーデータ、現在の映像データに加えて音を記録しておくと、あとで有効に活用できる気がしています。
角井さん:当日の感想+「マルチメディア辞典」の項目に「サイバーフォレスト」を入れようとしているとのことです。もちろん是非お願いします!!
廣瀬さん:音だけでなく「香り」も必要だという感想です。フィットンチドやについての解説付きです。植物のケミカルコミュニケーションの方法の一つであるアレロパシーって言葉も出てきます。ズバリ究極のサーバーフォレストのモニタリング要因ですね。バーチャルリアリティ装置では、映像+音+揺れ動き(6軸)+そして、風や温度のコントロール、、で「香り」は一番最後で、一番大変ってことかもしれません。ただ、確かに映像と音で、森林内を再現するときに、木の香りなどさせておくと、効果はあるでしょうね。
現地見学会(1997年11月11日)の感想その他、思ったこと。 富士通ブックス 酒井崇裕
私は生まれが長野県ですので、小さい頃よく山に入って昆虫採集をしたことなど思い出しました。都会の雑踏を離れて新鮮な空気を吸うと、身も心も浄化された気分になります。天気が良かったのが何よりでした。以下、徒然に感想や思ったことなど書いてみたいと思います。
1 現地を訪ねるということ
サイバーフォレストついては斎藤先生の書かれたテキストとお話で、情報を得ていたわけですが、実際に現地に足を踏み入れて体験してみるのは、やはり圧倒的な説得力があると思いました。特に感情に訴えかける要素、枯れ葉がハラハラと落ちる様子、木々の間を風がすり抜ける音、地面を踏みしめる感触、肌に感じるしんとした空気、森林の香りなど、印象として残るものが有機的にまとまり森林全体の理解へと導いてくれるような気がします。普段の生活で眠っていた感覚が驚くほどセンシティブなる。と言うか、本来人間というのは自然の一部としてそういうものなのかも知れません。そうした瞬間の体験だけでなく、「春にはどんな様子になるのだろう」「この木が芽吹いた時はどんなだったろう」「太古の森林はどんな姿だったろう」といった時間軸に沿った想像力も掻き立ててくれます。テキストや画像で情報として伺っていたサイバーフォレストのコンセプトも、現地ではより理解できたような気がします。きっとこうした体験があった上で、サイバーフォレストを体験したならば、ある程度見当がつくというか、想像力が喚起されてリアルな森林の姿を思い浮かべることが出来そうです。
2 森林の音
森林の音ってどんな音?録音のお話を伺ってから記憶を辿ったり想像してみたのですが、何かこれといったイメージが浮かびません。あらためて森林の音を意識したことはありませんでしたし。。そう考えているうち森林の音を録音するという事に興味が沸いてきました。
3 集音する、再現する
ある音楽なり音なりを録音して音場を再現するのには、二つの立場があると個人的には思っています。一つは聞き手の耳に届くであろう音を、まさにマイクが聞き手になって聞いているがごとく収録する方法、もう一つは音源が振動し音として発せられた瞬間を捉え、最終的にスピーカーが音源そのものとなるがごとく収録する方法です。この二つについて私なりに少し考えを書きたいと思います。
3-1 マイクが聞き手
この場合当然のことながら、音源からは距離をおいて収録することになります。イメージをつかむ為にコンサートホールでオーケストラを収録する場合を考えてみます。ステージから発せられた様々な楽器からの音は、直接聞き手の耳に届くものもあれば、反射したり共鳴したりして耳に届くのは御存じの通りです。席に座った人間の耳には、各楽器から発せられた瞬間の音からは途方もなく複雑に変化した音が届く訳です。この鼓膜を振動させる直前の音を収録すれば席に座って聴いた音をリアライズドできるという立場です。ただ人間が音を認識するのはセンサーとしての鼓膜だけでなく、頭骸骨の振動や共鳴、身体の物理的な条件などが有機的に絡まったりフィードバックしたりした結果のトータルとして認識していると考えられているので、それなりの工夫をこらすという事がされています。ダミーヘッドを使ったバイノーラル録音はこの例です。再生の時はヘッドホーンを用いて鼓膜直前に辿り着いた音を、鼓膜直前で再生しようという考え方ですが、鼓膜直前で再生した後は、人間のオーガニックなシステムに委任してしまいます。つまり、頭蓋骨、筋肉、体液などに支えられたシステムの中の鼓膜がどのような作動をするのか、脳に辿り着くまでの神経システムはどのような作動をするのか、脳へインプットされたシグナルはどのような演算をされて、音の距離感、定位、位相など認識を得るのか、音を認識するシステムにとって身体はどのような意味をもつのかという研究が必要と思います。(余談ですが、私の知っているレコーディングエンジニアの中で、太った人は好んで低音をブーストする傾向がある気がします。)このような課題はあるにせよ強調したいのは、リスニングポイントでマイクが聞くがごとく集音しリアライズしようとするのがこの立場であるということです。
3-2 スピーカーが音源
この立場は最終的にスピーカーがまさに音源となるよう考えます。オーケストラの例でいえば全ての楽器に対し、一対一にスピーカーを対応していく。再生する場合はオーケストラの配置の通り、対応したスピーカーを全て配置する。バイオリンのスピーカー、ビオラのスピーカー、ホルンのスピーカー等々。各楽器の特性を全く忠実に再現できるスピーカーがあるとすれば、正にスピーカーが楽器となる。各演奏者に対しスピーカーを対応させれば、このスピーカーは下手な演奏をする、このスピーカーはちょっとピッチが高いなどとなって、いわばスピーカーのオーケストレーションが完成します。だだスピーカーから発せられた後の音響的な変化はリスニングルームの音響特性に委ねられるので、コンサートホールのようなリアルな体験をするには工夫が必要となると思います。(一番よいのは、収録したホールのステージにスピーカーを配置し、客席で聴く)しかしながら、音そのものを加工したり、リバーブ、ディレイ、ピッチチェンジなどを施してむりやり音場を再現するよりはリアルな体験が期待できます。このシステムでの収録方法は、音源が発せられた瞬間をマイクで拾う近接での収録になります。この立場に於いても音源は点ではないので、立体の振動をどのようにマイクの振動に変換するか、立体の振動をどうスピーカーの振動にするかという複雑な課題があると思います。
3-3 どの立場でリアルを求めるか
以上、極端な例かもしれませんが、二つの立場を書いてきたのは、何か音を録音しようとしたとき、この二つを混同しがちだからです。オンマイク、オフマイクという言葉を聞いたことがあるかも知れませんが、同じ音源についてリアルを再現する場合、オンとオフの併用は本来フェイズの違う立場の混同になると考えられます。レコード芸術の創作ということで言えばこの限りではありませんが。
4 森林の音場を再現する
森林の音を録音する場合、上記の立場のどちらが良いでしょうか?現地見学で感じたことは、音はあまねく森林全体から体験されるのだという感想を持ちました。しかしながら時としてスポット的に起こる音があるわけで(枯れ葉が地面に触れる音や、風で木々が擦れる音など)これも森林の一場面としてリアルな音です。
4-1 不完全ですがイメージとしての録音方法
私は基本的には3-2の立場で考えたらどうかと思います。しかしながらオーケストラと違って森林では、個として独立した音源などなく連続体として存在しています。そこで、再現されるであろうリスニングルーム空間を前提にして、森林の中のある一部分の空間を切り取るという考え方をしてみたらどうかと思います。つまり空間を構成する頂点にマイクを設置することを基本として考える。立方体ならば8、四面体ならば4、ピラミッドなら5、という具合に。リスニングルームではマイクの設置の通り、スピーカーをセッティングして再現する。勿論、頂点だけで情報量が不足であれば、辺や、面にマイクを置いて補えばよい。マイクとマイクで結んで得られる空間に発生する音場を収録し、スピーカーとスピーカーを結び再生音場を表現するというコンセプトです。この音場を作ってしまえば、スポット的な音はアトラクション的に考え、単独で録音したものを空間にはめ込んで行けばよい。(例えば、時間軸に沿って、ここで枯れ葉が落ちるとか)。まずは5ポイント収録(ピラミッド)が現実的に実験可能な射程距離と思います。3-1の立場も考えて見ましたが、ヘッドホーンを付けてジッと音だけに集中していることを被体験者に強いることになりますし、森林全体を体で体験するというリアルな感じが出せない気がします。(音空間を散策するといったことができない)
5 現実的な問題
どのような方法で録音するにしろ大きな乗り越えなくてはならない障害があると思います。マイクは、特に性能がよいものほど、湿気に大変弱いので、雨風にさらされる森林では相当な工夫が必要と思います。長期間に渡って収録するとなると、特性の維持はおろか下手をすると壊れてしまいます。温度の変化もいいことはありません。雨しのぎのフードを付ければ、ボツボツと雨の打ちつける音が入ってしまいますし、風はマイクを吹きますし。。職人的な技が必要と思われます。思ったのですが、森林の音って結構デリケートな音が多い上ダイナミックレンジが大きいので、高性能なマイクが欲しくなりますね。自然の条件とマイクの性能と、どう折り合いをつけるかが問題と思います。
6 音認識の心理的側面
先日NTTのコンピュータ音楽シンポジウムという催しの中で、NTT基礎研究所情報科学研究部聴覚研究クループの柏野牧夫 さんという人の発表が大変興味深かったです。簡単には人間が音を認識する過程は受動的なものではなく、無意識の知性ともいうべき処理によって能動的に認識されるといった主旨でした。ちょっと意外ですが、NTT基礎研究所では音に関する研究に力を入れているみたいです。
http://www.brl.ntt.co.jp/info/hsrg/index_j.html
サイバーフォレストのプロジェクトに引き込んでしまうというのはどうでしょう(笑)。アクセスする価値はあると思います。反応が良かったら研究費もでるかも?
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角井です・・・ 秩父は、とても楽しめました・・・ マルチメディア辞典に原稿として「CyberForest」項目に 登録していただけそうですが・・・ 筆者の伊藤さんから以下原稿と許諾について問い合わせが来ております ちなみにビデオテープは、伊藤さんにお渡ししてあります・・・ 許諾頂けるようであれば・・・御返答お願いいたします よろしくお願い申し上げます・・・ (斎藤:もちろん、是非掲載していただけるようお願いしました。)
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廣瀬@Fast!Studioです。 ..... さて、先日のシンポジウムで思ったことですが、 音を録音、再生する事も重要ですが、香り(嗅覚)もかなり 重要な位置を占めていると思います。(森林浴などという言葉もあります。) もし、可能であるなら、香りも収集・分析して、音と一緒に 再現できたら、と考えました。 四季で森の植生も多少は移り変わるでしょうから季節ごとに香りの成分を 変化させることが出来るのならかなり面白いかと思います。 家庭で手軽に森林浴を再現するため「フィトンチッド」 も現在販売されています。 フィトンチッドは一般には「森の香り」として認識されています。 植物が作り出す揮発性の香気成分のことで、 a)他の植物への生長阻害作用 b)昆虫などから身を守るための摂食阻害作用 c)昆虫・微生物の誘因・忌避作用 d)殺虫・殺菌作用 などが知られています。 また、木々がお互いに情報を交換(アレロパシー(他感作用)) するための情報交換物質としても使用されています。 1930年代に旧ソ連B.P.トーキン博士が発見し、名付けました。 フィトン(植物)チッド(殺す) 「植物の不思議な力フィトンチッド 」B.P.トーキン 著 講談社 主成分はテルペン類(モノテルペン、セスキテルペン、など)です。 しかし、揮発性ではないテルペン類 (ジテルペン、セスタテルペン、トリテルペンなど) もフィトンチッドであり、 フィトンチッド:植物に含まれるあらゆる物質で、他の生物の 生活や行動に何らかの影響を与えるもの 「フィトンチッド」イコール「森の香り」ではないのですが 世間一般にフィトンチッドという呼称は 「森林の間伐材などから抽出した精油類」 として用いられていると思います。ヒノキの間伐材から 精製されることが多いので、一般に売られている 「フィトンチッド」の主成分はカンファー、α−ピネン、リモネン、 カジノールであると考えられます。
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現地見学(19971111)報告へ戻る
1997年12月4日掲載 cyberforest@fr.a.u-tokyo.ac.jp