N-1 地球環境について考えるとき、人は陸地の面積の30%を占める森林のことを、学び、正しく知ることが必要です。
N-2 東京大学農学部附属演習林では、100年にわたり実際の森林を維持管理し、調査研究がつづけられてきました。
N-3 私たちは、この蓄積された圧倒的量の情報と時事刻々集まる現在の情報を基にして、デジタルなコンピュータネットワーク上の世界である「サイバースペース」の中にデジタルな森林「サイバーフォレスト」を作り出そうとしています。
N-4 サイバーフォレストは地理的・物理的に制約の大きかった森林研究・森林教育に新しい方法をもたらしてくれると考えています。
1.オープニング QuickTimeMovie(1分22秒/4.5M)
熊谷洋一(東京大学教授・森林科学専攻)
「今地球規模での森林資源の確保、また、砂漠化や温暖化そして酸性雨など地球規模での環境の問題が大きな課題になっております。そして国内でも森林の荒廃による洪水あるいは土砂崩壊、も大変重要な課題になっています。更には美しい景観の保全、こういったことが安全で快適な国民生活のために非常に重要な問題となってきている訳です。そこで、今まで以上に森林に関する資源的機能あるいは環境機能の先端的応用的な研究が必要になってきます。しかしながら、森林は大変多様で複雑な自然の生態系のシステムの上に成り立ってますし、また一方で人間側の社会経済条件、あるいは政治条件によって左右されてしまう、そういう大変複雑な、そして奥の深い自然の状況の下に成り立っております。そこで私たちはその森林を、もし一度破壊してしまうとその回復には大変長い時間・コストがかかりますし、また、場合よっては回復が困難なことも多くあるわけです。従って実際の森林を使って色々な危険な、あるいは後世に悔いを残すようなことのないように、研究をさらに進めていく必要があるのですが、そのためには将来の森林の状況を正確にそして自由に再現し、あるいは予測する、そして評価する、こういった様なシステムが必要となってきます。」
2.イントロダクション QuickTimeMovie(2分10秒/6.9M)
N-5 サイバーフォレストは、実際の森林から得られた情報を位置と時間を基に結びつけたデジタルデータの集まりであり、コンピュータネットワーク上で共有され、現実の森林と常にシンクロし、現実の森林を可能な限りネットワーク上で再現しようとするものです。
N-6 サイバーフォレストは多くの利用方法が想定されています。
N-7 同じ森林で行われた調査資料は共同利用され、分野ごとの効率的な分業がおこなえます。
N-8 外国の研究者、森林科学以外の研究者にも開放された森林研究の基盤となります。
N-9 森林や地球環境をテーマにした理科教育の教材として実際の森林の情報を使うことができます。
N-10 こうして、多くの分野にわたる広い視野で森林を分析できます。
N-11 そして、森林をフィールドとした多目的で広域な研究が加速されます。
N-12 森林を記録する情報には、樹木の測定データ、気象観測データ、野生動物の調査など、従来から行われてきた学術的な調査によるものがあります。
N-13 現在、これらの情報に加えて定点、定時のモニタリングビデオによる森林映像情報の整備を行っています。森林映像情報は、記録し再現することの難しい「景観」、「空間の構成」、「質感」、「色」、「光」など森林の複雑な要素を伝えることに加えて、従来からの情報を補完し、統合する森林情報の索引としての役割が重要です。
3.コンセプトQuickTimeMovie(2分20秒/7.5M)
N-14 では、これから1995年10月より進めている森林映像記録ロボットの開発とその成果について説明します。
N-15 現在、東京大学秩父演習林内に、1本の樹木の枝や葉の様子を詳細にとらえる天然林樹冠部ロボットカメラと、天然林や人工林などの森林全体を撮影する森林景観ロボットカメラの2台を設置して、応用研究を進めています。
N-16 最初に、天然林樹冠部ロボットカメラを紹介します。秩父演習林では1991年から標高1200メートル付近のブナ・イヌブナ原生林で山地帯天然林の生態系解明のために調査区域を設定して継続的な総合調査を進めています。
N-17 調査区域内では高さ約25メートルの鉄塔を設置し、地上から樹冠部までの林内の垂直的層別の微気象、樹木フェノロジー、昆虫群集等の調査が行われています。この観測鉄塔の最上部に方向とズーム率をコンピュータで制御する野外用ビデオカメラを設置しました。
N-18 おもにブナ・イヌブナの樹冠部を様々なズーム比率で記録します。毎日定時に決められた40の方向をカメラが自動的に向き、録画します。
N-19 商用電源のない森林に設置するために、バッテリ・太陽電池を組み合わせたタイマーで起動するガソリン発電機を利用しています。
N-20 次に森林景観ロボットカメラを紹介します。カメラ部分が室内タイプである他は、さきほどの樹冠部カメラと同じシステム構成で運用しています。
N-21 撮影は、600メートルから1キロメートル程度の距離の森林です。スギ・ヒノキ・カラマツ等の人工林や、イヌブナ・ツガ天然林を対象に、その季節変化や経年変化を記録しています。
N-22 景観記録と同時に、撮影対象の森林内には気象観測塔を設置しています。風向・風力と日射量、温度・湿度を計測・記録し定期的にデータの回収をしています。
N-23 この森林では、1991年より、コンピュータグラフィクスを応用して、リアルな森林景観シミュレーションの技術開発研究を進めています。樹木の形状モデリングにはフランス シラドのアーマップ研究室との国際的共同研究により、植物成長モデルを応用しています。
N-24 植物成長モデルによりコンピュータの中で200種以上の植物を、樹齢や季節に応じて生成することができます。生成される植物形状は、膨大な実測データと植物学的知識に基づき、詳細な3次元形状データです。必要に応じて、シンプルなライントゥリーやポリゴン、リアルなレンダリングで表現できます。森林景観への応用のために、森林内での樹木成長モデルが開発されました。
N-25 森林の情報は、パソコンで持ち歩き、いつでも確かめることができます。演習林の森林情報は、森林簿と林相図で記録されています。これらの情報を地理情報システム GISに入力しました。GISを使って、自分の居る位置を入力すると、周囲の森林の樹種や樹齢などを知ることができます。
N-26 森林情報と地形情報から森林の3次元パースを作ることができます。さらにAMAPで生成した樹木をコンピュータの中に植林してリアルな森林景観シミュレーションが完成します。
N-27 コンピュータの中で成長する森林は、季節変化や伐採植林など様々なシミュレーションを自由に行うことができます。
N-28 この森林景観シミュレーション手法は、コンピュータの中の森林、サイバーフォレストでの様々な試験研究結果をネットワークで相互理解するための強力なビジュアライゼイション技術となります。
N-29 ロボットカメラで記録される映像や、気象データは、こうしたリアルな森林環境のシミュレーションの基礎情報として応用されます。
N-30 こうして天然林樹冠部ロボットカメラや森林景観ロボットカメラで記録された映像は、デジタル化され、ネットワーク上で気象データなどと結びつき、直感的でわかりやすく、なおかつ詳しい森林情報が提供されるようになりました。
4.森林景観ロボットカメラ QuickTimeMovie(6分24秒/22.6M)
熊谷洋一
「サイバーフォレストは森林に係わる様々な自然環境の情報を継続的に、そして時系列的に蓄積していきますし、更にはそれに係わる研究の成果とか、あるいは森林を取り扱う技術全てを情報として付加していくことができます。サイバーフォレストはコンピューターの中に作りあげられた森林です。現在は東京大学の演習林を対象にしてサイバーフォレストを構築していますが、今後は今共同研究しているフランスはもとより、様々な国、あるいは様々な地域とサイバーフォレストのネットワークを組んで研究を発展させていきたいという希望を持っています。
尚、このサイバーフォレストの最新の情報あるいは詳細についてはインターネットのwebページで公開しています。自然環境に興味のある方、あるいは環境情報科学を自然、環境、あるいは自然の森林、こういった様なものに応用したい人、そして教育研究に携わる人、興味のある方全ての方にこのサイバーフォレストを活用して頂いて私共の研究に理解とそしてご支援、協力をして頂く、さらには積極的に参加して頂きたい、という風に考えております。 」
5.エピローグ QuickTimeMovie(1分46秒/5.7M)